あきない世傳金と銀2 吉二(齋藤潤)菊瀬栄次郎の弟子

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あきない世傳金と銀2の吉二と菊瀬栄次郎

吉二と菊瀬栄次郎は師弟関係

NHKBS/BSプレミアム4Kで2025年4月6日から放送される「あきない世傳(せいでん)金と銀2」に登場する人物に、齋藤潤さんが扮する吉二(きちじ)という男性がいます。

吉二の役柄は風間杜夫さん扮する歌舞伎役者・菊瀬栄次郎(きくせえいじろう)の弟子で、歌舞伎の世界でも子役として徐々に注目される役者に成長しているというものです。

吉二と「吉次」

吉二は、「あきない世傳金と銀2」の原作小説である「あきない世傳金と銀」(七)碧流篇にも登場します。ただ原作小説での名前の表記は「吉次」であり、漢字が異なります。

ちなみに吉二の師匠である栄次郎も原作小説では「菊次郎」であり、ドラマと原作小説の間で名前が変わっています。

着物は表地と裏地の素材を合わさなければならない

木綿の稽古着に不満がある吉二と栄次郎

大坂の人形遣いである亀三(星田英利)を通じて、五鈴屋のことを知っていた菊瀬栄次郎は弟子の吉二のために「木綿でも動きやすい稽古着を作ってやってくれ」という難題を、主人公・幸(小芝風花)に注文します。栄次郎曰く「裏地の木綿がゴワゴワして動きにくい」のだそうです。

そもそもなぜ栄次郎はこんな注文をするのでしょうか?これは木綿と絹の間にある繊維質の違いに起因します。

木綿の繊維

  • 繊維の太さ:直径 12~20ミクロン(µm)程度
  • 繊維の特徴:
    • 綿の繊維は植物由来(セルロース)で、短い繊維(短繊維)が集合して糸になります。
    • 天然の撚り(より)があるため、表面がややざらついた質感。
    • 繊維が比較的太く、吸湿性が高い。

絹の繊維

  • 繊維の太さ:直径 10~15ミクロン(µm)程度
  • 繊維の特徴:
    • 絹は動物由来(蚕の繭から取れるフィブロイン)で、長繊維(フィラメント繊維)。
    • 非常に細く、表面が滑らかで光沢がある。
    • 木綿より細くて軽いが、強度は高い。

簡単にまとめると、木綿の繊維は絹の繊維と比べると太くて硬いという特徴があり、これらの特徴が「木綿はゴワゴワする」という原因になっています。

表地は木綿で裏地は絹織

そこで栄次郎(菊次郎)は、幸に対して「ある依頼」をします。それは「吉二の稽古着の表地は木綿のままにしておいて、裏地は絹織にしてほしい」というものです。

つまり表裏で素材の違う稽古着を仕立ててほしいということですが、呉服太物商を名乗る幸にするとかなり無理な注文です。

呉服の基本的な決まり

呉服商売の基本として表地と裏地で異なる素材を使用することは、商売として「邪道」であり、格式の高い呉服商ほど表地と裏地の素材を合わせるという暗黙のルールに従う傾向にあります。

絹の表地 → 裏地も絹

  • 絹織の着物は、基本的に裏地も絹で仕立てられる
  • 例えば、振袖、訪問着、留袖、色無地、付け下げなどの格式が高い着物では、裏地も絹が一般的
  • 長襦袢(ながじゅばん)も、絹の着物に合わせる場合は絹のものを使うのが基本

木綿の表地 → 裏地も木綿

  • 木綿の着物(浴衣や普段着用の着物など)は、裏地も木綿が基本
  • 木綿の着物は洗濯のしやすさや通気性の良さを考慮して作られているため、裏地も同じ素材で統一することが多い

なぜこのルールがあるのか?

着物の表地と裏地の素材を合わせのは、主に以下の3つの理由が挙げられます。

1. 風合いを統一するため

異なる素材を組み合わせると、着物の動きや質感が不均一になり、着心地が悪くなることがあります。

2. 洗濯や管理のしやすさ

木綿の着物は自宅で洗えることが多いですが、裏地が絹だと洗濯が難しくなります。そのため、木綿の着物には木綿の裏地を使うのが一般的です。

3. 格式を保つため

絹の着物は格が高いため、裏地にも相応の素材(絹)を使うことで品格を維持します。

着物の裏地には 胴裏(胴の部分)と 八掛(裾回りの裏地)があり、この部分だけ異なる素材を用いることもあります。

素材を安易に変えることは呉服商の信用問題

このように仮にも「呉服商」を名乗る商家が、表地は木綿・裏地は絹織という着物作りに安易に加担してしまうことは、世間から「単なるコストカット」と思われてしまい、店の信用問題に関わることでした。

そのため栄次郎の「依頼」は、これから江戸で新しく信用を築かなければならない幸にとって難題でした。

浜羽二重を裏地とした稽古着

栄次郎の依頼を受ける幸

栄次郎の依頼を引き受けるかどうか迷う幸ですが、吉二の眩いばかりの美しさとその将来性にかけて、「表地は木綿で裏地は絹織」という呉服屋としては引き受けづらい依頼を引き受けます。

商売の決まりごとがうるさい大坂では、このような依頼を引き受けることはできなかったかもしれませんが、新興都市の江戸であったからこそ、幸は引き受ける気にもなったのかもしれません。

裏地の絹織は浜羽二重

幸は表地の木綿は美しい染め色で模様のないものを、裏地の絹織は五鈴屋のオリジナルブランドである、江州波村(ごうしゅうはむら)の「浜羽二重」を用いることにします。

「浜羽二重」であれば、他の羽二重よりも丈夫な上に、吉二の所作に適うと考えたからです。

浜羽二重の稽古着は中村富五郎の耳にも

結局、幸が自ら仕立てた稽古着は、かなり動きやすいものに仕上がり、吉二が大満足するものでした。やはり師匠の栄次郎が、あらかじめ考えていたように滑らかな肌触りになったようです。

五鈴屋のご寮さん自らがたった一着の稽古着のために反物を用意して仕立てまですることは、商売としての帳尻が合わないことです。

しかし「浜羽二重の稽古着」は歌舞伎関係者で評判を呼び、のちに片岡千之助さん扮する中村座の中村富五郎(なかむらとみごろう)の耳にまで届くことになります。

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