あきない世傳金と銀2 和三郎(浅利陽介)撞木を作る指物師

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指物師の和三郎とは

幸は和三郎に「撞木」作りを依頼する

NHKBS/BSプレミアム4Kで2025年4月6日から放送される「あきない世傳(せいでん)金と銀2」の江戸編に登場する人物として、浅利陽介さんが扮する和三郎(わさぶろう)という男性がいます。

和三郎は指物師(さしものし)の職人で、五鈴屋七代目当主で主人公・幸(小芝風花)は和三郎に「撞木(しゅもく)」作りを依頼します。

指物師(さしものし)と撞木(しゅもく)

指物師(さしものし)とは、木を組み合わせて家具や箱などの木工品を作る職人のことを指します。指物屋や箱大工、指物大工とも呼ばれます。彼らは釘などの接合道具を使わず、木材と木材を合わせる技術に長けています。

また撞木とは主に寺院にある鐘・半鐘などを打ち鳴らす丁字形の棒のことですが、呉服太物商の「五鈴屋江戸店」がお寺の突棒を作るように依頼したのかと言えば、そうではありません。

「あきない世傳 金と銀2」で登場する撞木とは、一般的な意味で使われる鐘をつくための棒のことではなく、反物を縦にかけて店頭に来た客が着物を着た時にどんなイメージになるのか見せるための道具のことを言います。

撞木とは

撞木とは「小型衣桁」のこと

主人公・幸が言う撞木とは、一般的な意味で使われる鐘をつく棒のことではなく、強いて言うなら衣桁のことを指します。

衣桁とは着物をかけるハンガーのことですが、原作小説の「あきない世傳金と銀」(六)碧流編を読んでいると、衣桁とも若干異なる形をしているようです。

幸たち「五鈴屋江戸店」の人たちがイメージしている撞木とは、着物に仕立て上がる前の反物を縦に見せるための道具であるので、着物ほど高くする必要はありません。したがって撞木の代わりに着物の丈よりも背が高い衣桁という言葉を使うとすれば、「小型衣桁」という言葉が的確な表現になります。

撞木杖からきた撞木

実際に和三郎は自分に依頼された指物を「小型衣桁」と表現しますが、幸は「撞木」という言葉にこだわります。

「五鈴屋の要石」といわれた前の番頭の治兵衛(舘ひろし)が、卒中で倒れた後に歩くためのリハビリに使っている頭部が丁子形の「撞木杖(しゅもくづえ)」のイメージに近いため、「小型衣桁」ではなくあえて撞木という表現を使っているからです。

呉服商のディスプレイ

普段は蔵にしまわれていた反物

現代では商品となる着物や洋服を店頭に飾ったりマネキンに着せたりして、お客はそれらを基準にして購入するかどうか検討するのが一般的です。

しかし「あきない世傳 金と銀2」の時代背景となる江戸時代の呉服商では、反物を店にディスプレイするためには一般的ではありません。売り物となる反物は普段は蔵にしまっています。

店の手代たちがお客の好みを聞いた上で、丁稚たちに反物を取りに行かせた反物を見せながらお客と商談をするというスタイルが一般的でした。

幸は反物を店頭に出すことを決意

しかし「あきない世傳 金と銀2」の幸は「五鈴屋江戸店」では、「客の好みに合わせて反物を蔵から出してきて見せる」という商品の展示方法を改めます。幸が展示方法を改めたのは2つの理由があったからです。

1つは蔵から反物を取り出して見せると、その反物は店内の畳に置いてその良し悪しを判断することになります。これでは反物は立体感がなく、着物として仕立てた時にどうなるのか客はイメージしづらいという欠点があります。

もう1つは呉服屋として後から江戸に参入した「五鈴屋江戸店」のブランドイメージを確立するためです。他の呉服屋との差別化を図るために、「自分たちのおすすめする反物はコレです」という視覚的な訴求をしたかったらデス。

絹織物は光と埃に弱い

ただし幸が考案した「撞木に反物をかけてディスプレイ」するという販売方法にはデメリットもあります。それは絹織物は光(紫外線)と埃に弱いということです。

光(紫外線)に弱い理由

  • 絹の主成分はフィブロインというタンパク質ですが、紫外線を長時間浴びると酸化や分解が進み、繊維がもろくなりやすい
  • 直射日光や蛍光灯の光でも、長時間当たると色あせや黄変(黄色く変色する)現象が起こりやすい
  • 天然染料で染めた絹は、特に光による退色が起こりやすい

埃に弱い理由

  • 絹は湿気を吸収しやすい性質があり、静電気が発生しにくいため、細かい埃が付きやすい
  • 埃が溜まると、生地の風合いや光沢が損なわれることがある
  • 絹の繊維はタンパク質なので、湿気を含んだ埃が蓄積するとカビの原因になりやすい
  • 埃があることで虫(衣類害虫)が卵を産みつけやすくなるため、虫食いのリスクも高まる

絹でできた「さいはらい」を考案

呉服が光に弱いということについては、反物を直射日光を避けるように置くことで回避することができますが、店頭に置いている以上、埃がつくことは避けられません。

では幸たちはどうやってこの弱点を回避したかというと、古い絹布の端切れを集めて、ハタキがけをすることです。これを「さいはらい」と言いますが、絹に対して絹で埃を払うことで反物に傷がつくことを防ぎながら埃を払うことを可能にしました。

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