あきない世傳金と銀2 治兵衛(舘ひろし)五鈴屋の前・番頭

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あきない世傳金と銀2の治兵衛とは

五鈴屋の要石であった治兵衛

NHKBS/BSプレミアム4Kで2025年4月6日から放送される「あきない世傳(せいでん)金と銀2」の大坂編に登場する人物として、舘ひろしさんが扮する治兵衛(じへえ)という男性がいます。

治兵衛は「あきない世傳金と銀2」の前作である「あきない世傳金と銀」から登場する人物で、大坂天満の呉服商・五鈴屋の前の番頭で、天満組呉服仲間たちからは「五鈴屋の要石(かなめいし)」と言わしめた存在でした。

治兵衛は8才で二代目徳兵衛の五鈴屋へ奉公

治兵衛の五鈴屋での奉公は、萬作こと二代目徳兵衛のころに遡ります。治兵衛は二代目徳兵衛が当主のときに、8才で丁稚として五鈴屋に奉公に上がります。

二代目徳兵衛が当主となったときの五鈴屋はまだ呉服商ではなく、裏通りで初代徳兵衛が開業した古手商を営んでいます。しかし時は元禄年間で世間の景気は良く商品を並べれば、右から左へと簡単に売れてくいく時期でした。

勢いに乗る二代目徳兵衛は思い切って商売を古手商から呉服商に、店も裏通りから表通りに移動し、天満組呉服仲間となります。

四代目徳兵衛のときに別家を許される

そして五鈴屋の当主は萬作こと二代目徳兵衛から、栄作こと三代目徳兵衛、豊作(渡辺大)こと四代目徳兵衛と名跡が引き継がれていきます。

治兵衛は「五鈴屋の要石」として三代にわたって仕えた忠義の番頭ですが、1748(元文3)年に卒中風で倒れ、半身不随となります。このとき治兵衛は、五鈴屋のお家さん(おえさん)である富久から手元銀(てもとぎん)を与えられ、別家となります。

別家とは主家からのれん分けを許され、独立開業をする奉公人のことです。しかし治兵衛は体の自由が利かないため、実質的には商売から引退し、日々の生活費は妻のお染が行う裁縫の内職で賄っています。

別家の2年後に息子・賢輔が五鈴屋に奉公へ上がる

ちなみに治兵衛が別家となった2年後の1750(寛延3)年には、治兵衛とお染の一人息子である賢輔が五鈴屋に丁稚として奉公に上がります。奉公に上がった賢輔は、大坂の商家の慣わしに従って「賢吉」と名を改めます。

治兵衛の手元銀と別家

理想のキャリアを歩んだ治兵衛

ここまで「五鈴屋の要石」と言われた治兵衛の奉公人としてのキャリアを説明してきました。8才で五鈴屋の丁稚として奉公に上がり、最後は手元銀を与えられ、別家を許された治兵衛は、江戸時代における男性奉公人の理想とするキャリアであったと言えるでしょう。

この五鈴屋から治兵衛に与えられた手元銀と別家は、現代の退職金制度の源流の1つと考えられます。

日本の退職金制度について

現在の日本の会社員で、特に永年勤続をされている中高年の方にとって、定年退職をするにあたって長年勤めた会社から退職金をもらって退職をすることを目標とする方も大勢いらっしゃるでしょう。

会社が支給する退職金は、それぞれの会社が定める「退職金制度」で任意に設定されていますが、退職金の考え方は「1.賃金の後払い説」「2.のれん分け説」「3.永年勤続の報奨説」の3つから成り立っていると考えられています。

1. 賃金の後払い説

意味

退職金は、本来は労働者が働いた期間に対して支払われるべき賃金の一部を「退職時にまとめて後払いする」ものだとする考え方。

背景

  • 日本の企業では、戦後の高度経済成長期にかけて終身雇用の文化が定着
  • 労働者の給与を一部抑える代わりに、「退職後に一括で支払う」形をとることで、企業側の資金繰りを調整する側面も。

ポイント

  • 労働基準法上、退職金は「賃金」の一部と解釈されることがある
  • ただし、企業ごとに退職金規定が異なり、必ずしも賃金の後払いとは限らない

影響


この説に基づくと退職金を支払う義務が企業にあるという解釈になりやすく、労働者側にとっては「当然の権利」とみなされることが多い。

2. のれん分け説

意味

]退職金は、長年会社に貢献した社員が「独立」したり、新たな仕事を始めたりするための「開業資金」や「準備金」の意味合いを持つとする考え方。

背景

  • 江戸時代の商家では、奉公人(従業員)が永年にわたって勤めると、店主が「のれん分け」として独立資金を支給し、暖簾(のれん)を貸し与えた
  • 戦後も、職人や商店経営者が弟子や従業員を独立させるための支援金として退職金を支払う風習が残った

ポイント

  • 独立支援の意味合いが強いため、現在の企業では適用されにくくなっている。
  • 会社側の好意による支給であり、労働者の権利とは異なる側面を持つ。

影響


この説に基づくと、退職金は「必ず支払われるものではなく、企業の裁量で決められるもの」という解釈につながる。

3. 永年勤続の報奨説

意味


退職金は、長年にわたって会社に尽くした従業員に対する「功労報酬(報奨金)」として支払われるものとする考え方。

背景

  • 日本の企業文化では、「会社への忠誠心」が重視され、長年勤めた従業員には敬意を表する習慣がある。
  • そのため「定年まで勤め上げた社員に対する感謝のしるし」として、退職金が支払われるようになった。

ポイント

  • 退職金は「会社への貢献度」を評価するものであり、給与の後払いとは異なる概念。
  • 企業側の判断で金額を決定することが多く、必ずしも労働者の権利ではない。

影響

この説に基づくと退職金は会社からの恩恵的な支給であり、企業が自由に決められるという解釈になる。

手元銀と別家という「退職金」

現代の日本の会社が支給する退職金とは「1.賃金の後払い説」が有力ですが、五鈴屋が治兵衛に与えた手元銀とは「3.永年勤続の報奨説」、別家とは「2.のれん分け説」に基づく退職金と考えられるでしょう。

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