あきない世傳金と銀2のお竹
いしのようこさん扮するお竹について
NHKBS/BSプレミアム4Kで2025年4月6日から放送される「あきない世傳(せいでん)金と銀2」に登場する人物に、いしのようこさんが扮するお竹(おたけ)という女性がいます。
NHKが公開した「あきない世傳 金と銀2」のあらすじに関するブログ記事を読むと、お竹は「江戸店の開店を準備する幸は、商いの右腕にお竹(いしのようこ)を指名」と紹介されています。
原作小説の「あきない世傳 金と銀」(七)碧流篇ではお竹は、江戸・浅草田原町に開店する「五鈴屋江戸店」で小頭(こがしら)をつとめることになります。
一介の「女衆(おなごし)」に過ぎないお竹
そもそもお竹とはどういう人物なのでしょうか。お竹は「あきない世傳 金と銀2」の前作である「あきない世傳 金と銀」から登場している人物で、原作の小説版「あきない世傳 金と銀」源流篇から登場しています。
お竹は女衆(おなごし)の1人として大坂天満の「五鈴屋」に古くから仕え、主人公・幸(小芝風花)が「五鈴屋」のご寮さんとなる前からの古株です。
主筋と奉公人といった封建時代における上下の区別に厳しい女性で、9才から14才まで「五鈴屋」の奉公人とだった幸も、お竹から台所仕事やお針仕事以外にも、主従のけじめについて厳しく仕込まれました。
幸が江戸でお竹を小頭役に
主人公・幸(小芝風花)は「五鈴屋江戸店」を開店するにあたって、自ら大坂天満から江戸に乗り込むことを決め、このお竹も江戸に連れていき、「小頭役(こがしらやく)」に任命します。
商家における「小頭」とは、「小さな集まりをまとめる」という意味で、手代を長く勤めたものに与えられる肩書きです。
小頭の肩書きは大坂の商家では使われることはほとんどありませんが、江戸の商家ではたまに使われます。ですが、女性に小頭の役割を与えることは極めて珍しい例です。
お竹が小頭役に抜擢された理由
「女子は一生鍋の底を磨いて終わる」女性奉公人たち
「あきない世傳 金と銀2 女衆(おなごし)と女名前禁止」という記事で、江戸時代に商家へ奉公へ上がった女性がどのようなキャリアを歩むかを紹介しました。
女性の奉公人は主筋のプライベート空間で働くことになっており、本業のビジネスに関わることは一生ありません。ましてやビジネスで昇進をして何か肩書きが与えられることは、もっとありえませんでした。
これは現代において「男女の機会不平等」として非常識な考え方ですが、当時は「女子(おなご)は一生鍋の底を磨いて終わる」といわれたように、女性奉公人は台所仕事や裁縫だけをしていれば良い考え方が常識でした。
お竹が小頭になれた2つの理由
ですが五鈴屋の六代目徳兵衛(智蔵)が亡くなった後、大坂天満・呉服仲間にある「女名前禁止」の例外規定を使って、「足掛け三年」の七代目当主となった幸は、たっての願いでお竹を「五鈴屋江戸店」の小頭役に任命します。
幸が江戸でお竹を小頭役につけた理由は大きく2つあります。「お竹の個人的能力」と「江戸と大坂の土地の違い」です。
お竹の個人的な能力
お竹は台所仕事と裁縫だけを要求される女衆でありながら、呉服を着るときに必要な着こなしの才や帯結びの才に長けています。
実際にお竹は大坂天満にいるときから、幸の妹である結(長澤樹)をモデルとして帯結びの方法を、「五鈴屋」の得意客たちに教えて回っていました。
江戸と大坂の土地の違い
江戸時代前半から半ばぐらいまで、江戸は開発途上の都市で、京・大坂と言われる上方の方が先進的な都市でした。
長く続いてきた都市として京・大坂は決まり事にうるさく、「女性が表の仕事に立ってはならない」という昔からの習慣に縛られがちです。
その京・大阪に対して、江戸は新興都市として常に人が流入し続け、新参者たちが街を支えているという構図になっています。そのため京・大坂といった古くからある大都市と比べた場合、商売に関する決まりごとが緩いという傾向があります。
例えば江戸では大坂にある「女名前禁止」という、女性が商家の名跡を禁ずると言った規定はありませんでした。必要に応じて女性が商家の主になることも珍しくなかったようです。
江戸でも帯結びの技を伝えるお竹
なお「あきない世傳 金と銀2」で小頭役に抜擢されたお竹は、「五鈴屋江戸店」のスペースを使って毎月十四日に、無料の「帯結び教室」を主催します。
もちろん将来的に教室にきた見込み客に対して、「五鈴屋江戸店」の絹織物や帯地を買ってほしいというビジネス上の戦略もありますが、しばらくの間は「五鈴屋江戸店」の名前を広げる役割も担っています。
こうしてお竹の帯結びの技が、「五鈴屋江戸店」がある浅草田原町周辺のおかみさんたちの間に伝わっていきます。