あきない世傳金と銀における鉄助とは
鉄助は治兵衛の次の五鈴屋番頭
NHKBS/BSプレミアム4Kで2025年4月6日から放送される「あきない世傳(せいでん)金と銀2」の大坂天満編と江戸編に通して登場する人物として、八嶋智人さんが扮する鉄助(てつすけ)という男性奉公人がいます。
鉄助はドラマ「あきない世傳 金と銀2」の前作である、「あきない世傳 金と銀」から登場するキャラクターで、前作に初めて登場した時の名前は鉄七(てつしち)で、手代の身分でした。
しかし物語の半ば、前の番頭である治兵衛(舘ひろし)が卒中で身体が不自由となり「別家」扱いとなったときに、新たに五鈴屋の番頭に昇進して大坂の商家に伝わる慣わしにしたがって「鉄助」と名前を改めます。
鉄助は幸よりも18才年上
ドラマの原作となった小説の「あきない世傳 金と銀」シリーズによると、鉄助が生まれた年こそ明記されていません。
しかし小説の記述を読んでいると、1724(享保9)年生まれである主人公・幸(小芝風花)よりも18才ほど年上であることがわかり、1706(宝暦3)年の生まれであると推測されます。
江戸時代における商家の養子縁組について
五鈴屋八代目当主の候補に上がった鉄助
鉄助の性格は生真面目で、主人思いの忠義の番頭です。五鈴屋の七代目当主である幸は、自分が天満組呉服仲間から五鈴屋の主に認めてもらったと言っても「足掛け三年」の「中継ぎ当主」であることは重々承知しています。
そしてその幸が、五鈴屋の八代目当主として「五鈴屋徳兵衛」の名跡をバトンタッチするべき人物に思いついたのは、この鉄助でした。
「五鈴屋の暗黒時代」を知る苦労人の鉄助
当時の男性奉公人が商家に上がるのは10才前後ですから、鉄助はすでに五鈴屋において勤続35年の実績があります。
鉄助は豊作こと四代目徳兵衛が女遊びに狂い、五鈴屋の経営が傾きかけたことも経験しています。また、次代の惣次こと五代目徳兵衛が経営を立て直すときに、「月一人八反の割り当て(売上ノルマ)」を課された厳しい時代も知っている苦労の奉公人です。
鉄助は「通いの番頭」で所帯も持っていない
物語を読む限り店に鉄助には番頭用の部屋を当てがわれて、住み込みを続けているようなので、出世が早いとも言えません。奉公人としてかなり地味なキャリアを歩んでいると考えられます。
五鈴屋は四代目と五代目のときに店の内情がかなり荒れていたので、鉄助は割を食っていたのかもしれません。
それだけにもし鉄助が望むのであれば、所帯をもって「通いの番頭」となることも可能でしょう(当時の商家では丁稚や手代の身分では結婚は許されなかった)。
「通いの番頭」であれば、主家から認められて独立開業ができる「別家(べっか)」の道もすぐそこです。幸が次の当主に鉄助を据えようとするのは当然の流れです。
幸よりも年上の鉄助は養子になれない
しかし鉄助を五鈴屋の八代目当主とする目論見は呆気なく崩れます。なぜなら年上の者を養子に迎えることは認められていないからです。実際、八代目候補の鉄助は、七代目当主の幸よりも18才も年上です。
商家の養子縁組の仕組みそのものは、縁組対象者が主家の親戚筋の出身であるとか、もしくは奉公人の出であるかなどの出自については差し障りはありませんが、年齢の上下関係だけはどうにもならなかったようです。
養子縁組によって形だけでも「親子」を作るためには、年齢の上下だけはわきまえなければならなかったようです。
鉄助と賢輔 次の「五鈴屋徳兵衛」
鉄助自身も五鈴屋の当主になる気は毛頭なかった
もっとも鉄助は「忠義の番頭」でもあり、五鈴屋を乗っ取って自分が八代目当主になろうとは毛ほども感じていません。
むしろ七代目当主の幸が「五鈴屋江戸店」の開業とその営業基盤を固めるために悪戦苦闘する中、鉄助は大坂天満で番頭として本店の商いをしっかりと守ります。
東海道を上って江戸店の準備に立ち会い、ときには江戸店が売り出そうとする「鈴の小紋染め」のための伊勢型紙を手に入れるため伊勢国(現在の三重県)・白子(しろこ)へたびたび往復するなど、鉄助は補佐役としても抜群の才覚を発揮します。
鉄助が八代目当主に推薦したのは賢輔
そして自分が五鈴屋を継ぐなどと夢にも思っていない鉄助は、五鈴屋の八代目候補として推薦した人物は、なんと「五鈴屋江戸店」で、まだ手代の身分に過ぎない若干21歳で、佐久間悠さんが扮する賢輔(けんすけ)です。
21才の奉公人が、番頭である鉄助の頭を飛び越えて主筋となることは、賢輔にすれば破格の出世に間違いありません。
「賢輔を次の当主としたい」という幸の内意を受けた鉄助は、同僚で「五鈴屋高島店」の支配人である周助と相談し、親旦那(おやだん)さんである孫六にも図り、さらに賢輔の父親である治兵衛の説得にも乗り出します。
賢輔と五鈴屋の後継者問題について
「あきない世傳金と銀2」で、幸の後継者問題は大変重要な問題として描かれます。八代目当主に望まれた賢輔とはどういう人物だったのでしょうか?
詳しくは後日公開する「あきない世傳金と銀2 賢吉改め賢輔(佐久間悠)八代目当主の候補」の記事を参考にしてください。